P31 辻本茂雄vs長原成煕
長原『そうや。で、その足で”うめだ花月”へ行ったんです。表の看板見たら、たまたま明石家さんまさんが出てはったんで、そうや、さんまさんに頼もうと思って。全く面識も何もなかったけど当たって砕けろやと。受付で「吉本です」と言うて、さんまさんの楽屋へ行ったんですよ。』
辻本『大胆な行動ですね。それ何歳の時?』
長原『20歳ぐらいの時やね。で、さんまさんの楽屋へ行って「実はNSCの面接に行ったんですけど断られました。僕ら吉本に入りたいんですが・・・」と頼んだんや。』
辻本『ええ度胸ですなあ・・・さんまさんはどんな反応でした?』
長原『ちょうど春先の季節やって。そんな奴が多い時期やから、さんまさんも慣れたもんで「うわぁまた変な奴が来よったで」という顔されたけど、「漫才のネタを書いて一週間後に持っておいで」と言うてくれたんですよ。そない言うといたらもう来よらへんやろうと思ってはったんでしょうね。』
辻本『ああ、そない言うといたらもう来よらへんやろうとね。』
長原『それまで漫才なんかやったことなかったけど2人でネタ考えて、一週間猛練習して、さんまさんに会いにいったんですよ。そしたら2人のこと覚えてくれてて、喫茶店へ連れて行ってくれて台本を手直ししてくれたんです。その時、Mrオクレさんもいてはりましたわ。』
辻本『へえー、さんまさんが台本を手直ししてくれはったんですか?』
長原『うん。で一カ月ほどその台本で猛練習して、吉本の本社へ行ったんですよ。とにかく「吉本(興業)に入れてくれ!入れてくれ!」と日参して頼みましたんや。』
辻本『もう押しの一手ですね。』
長原『そうや。そしたらある日、今は会社の偉いさんやけど、冨井さんが「お前らスーツ持ってるか?」と聞くので「はい、持ってます!」と答えると、「ほな今すぐに帰って持って来い」と。それが土曜日やって、次の日の日曜日に舞台に出してもろたんです』
辻本『粘り勝ちや』
長原『なんば花月やった。ノンブランド漫才というのがあって、そのトップに出してもろた。まだコンビ名も無かったから、とりあえず【生野ブラザーズ】というコンビ名でね。』
辻本『なんか劇的な初舞台ですね。ええ時代やったんですね。』
長原『うん。その初舞台を、たまたま笑芸作家の香川登志緒さんが見てくれはって、「漫才はヘタやけど勢いがある」と会社へ言うてくれはって・・・なんば花月の出番を組んでもらえることになったんです。』
辻本『それが村上龍也と長原成煕の【ヤンキース】というコンビやったん訳ですね』
長原『うん。小学校からの同級生ですわ』
ものすごいええ時代。楽屋には入られへんしな素人が、今なんか。香川さんてここぞと言う時によく出てくるな。冨井さんて、あの冨井さんか。ほんまええ時代。