ボランチに稲本使え、俊輔で組み立てて中田で点を取れ


 いうまでもなく日本の最高の長所は中盤の構成力だが、ブラジル戦で勝利を収めるために指摘したいことがある。かつて私のアーセナルでプレーしていた稲本の起用だ。クロアチア戦の後半にようやく投入されたが、あの交代は本当に良かった。オーストラリア戦で稲本の出番がなかったことが残念だ。相手のプレッシャーにも決してパニックに陥らない成熟さを見せ、パスも正確で視野も広い。守備力も高く、中田英以上の身体的なパワーも持っている。一方、ボール奪取力の高い福西もオーストラリア戦で自信に満ちた素晴らしい働きを見せていた。4バックの場合、中盤の底は福西と稲本が最高のペアだと思っている。彼らは守備力が高く展開力もある。中盤の誰かを犠牲にする必要はあるが、勝てないときは常に勝つべき方策を立てなければいけない。個人的な意見だが、小笠原を外して、中田英、中村、福西、稲本という中盤の構成を推薦したい。
 今のチームの攻撃の中心は間違いなく中村だが、中村と中田英の位置関係に違和感を覚える。今は中村の位置がより高く、中田英は低い。だが、両軍の運動量の減少する試合の終盤では、中田英の得点力がより期待できるのではないかと思う。中村はトッププレーヤーだ。非常に力強い選手だが、縦のスペースに抜けるパワーはさほどない。逆に中田英にはそのパワーがある。ゴールをうかがう嗅覚(きゅうかく)もあると思う。今の日本の中盤には若干の矛盾を感じている。技術が高く、視野が広く、展開力に優れた中村がビルダーで、中田英がフィニッシャーである方が理想だと思う。
 今大会で中田英の変化を感じた。かつての彼は典型的な才能にあふれた新鋭だった。常に斬新で気の利いたプレーをしようとしていた。だが、彼は変わった。先鋭的な才能からチームプレーヤーに変貌(へんぼう)した。残念ながら、中田英のサッカー選手としてのピークはすでに過ぎ去った。だが、今でもいい選手であることには変わりはない。チームのために自分を犠牲にすることができる。彼の選択は正しく、自己中心的ではない。優れたディフェンダーとは呼べないが、常に相手にチェックに行く。英国の中盤の選手らしいファイターだ。