超映画批評−『単騎、千里を走る。』
一言でいうと、日中友好親善ドラマである。登場人物は、それぞれの国民性の"長所"のみを備えたステレオタイプで、たとえば中国人キャラクターはおしなべて素朴な人柄で、おおらかで親切、そして陽気だ。対する日本人(の代表たる高倉健)は、寡黙で誠実、義理人情の筋を通すタイプ。映画は両者の良いところを、これでもかというほどストレートに描写し、過剰なまでの親切の交換を行い、一切のいざこざもなく大団円という話だ。
しかしながら、この映画が中国人を親切に描けば描くほど、また、日本人との友情を美しく描けば描くほど、現実はその逆なのだと観客は意識させられ、複雑な思いだ。何しろこの作品に出てくる中国人ときたら、刑務所の服役囚でさえ、そろって善人そのものなのだから、ほとんど冗談みたいなモンなのである。
中国人が日本人役を演じただけでも中国国内では批判があるのだろう。しかも芸者役。ハリウッドの日本映画を流すだけでも駄目なのだから。現実はこの映画評のようなものだろう。どこからも、誰からも批判されないような映画しか撮影・上映できない。