- 作者: 松野大介
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 1995/05
- メディア: 単行本
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このコンビはダウンタウンのように子供のころからの友人でもなく、ウンナンのように専門学校で知り合ったわけでもなく、ピン芸人でやっていた松野氏がどうしてもピンではネタをつくるのが厳しいということで事務所(ナベプロ)が連れて来た相方が当時16歳のアイドル部門であぶれていた中山秀だった。それがなぜかコンビ結成から仕事に恵まれ、「いただきます」などに出演する。しかし、結成当初からそれぞれやりたいことは別だった。松野はお笑いこだわりたいタイプだったのに対して、中山秀は歌を出したり、ドラマに出たりしたかった。最初からコンビの方向性は別だった。
私は当時「いただきます」を見るとこのコンビはなぜ結成したのか不思議でしょうがなかった。コンビの共通項が全く無かった。ABはオールナイトニッポンなんかも担当さしてもらっている。オールナイトの20周年企画で各曜日のパーソナリティが集まったイベントがあったが、中島みゆき、とんねるず、小泉今日子、ビートたけし、サンプラザ中野とABブラザーズだった。豪華なメンバーに混ぜてもらっていた。
その後お笑い第三世代が台頭しABはコンビとしては売れなくなる。彼らと同じ舞台でネタをやってもABはまったく受けなくなり、テレビ局も第三世代の方に力を注ぐようになる。中山の方が器用で業界の渡り方もうまかったので、だんだん中山のピンの仕事が増えていく。最後にはコンビでやっていた仕事が番組リニューアルとともに松野だけが切られるという目に遭う。この辺の事務所のやり口や描写もエグイ。本人もどんどん追い込まれていく。そこから、物書きの方に進む道が開けたのは幸運と才能の賜物だと思うが、相方に対する恨みごとやねたみはなく、コンビ同士のキャラクターの違いが淡々と描かれていく。ABほどは売れなくても、ある程度売れて消えていくコンビ芸人は山ほどいるだろう。松野氏に物書きの才能があればこその本だった。